キットのチエック
キットを何とか手に入れました。気の早い人ならすぐ作り出します。しかし一寸待って下さい。慌てて作ると大抵失敗します。仕事をリタイヤし暇を持て余している人でもキットを作り出して3ヶ月以上も時間をかけないと完成しないと云う世界です。何もそんなに慌てることはありません。大抵初心者向けの製作記事にはすぐ始めるような事柄を書いたものが多いのですが、最初に慌てないで一寸キットを眺めてみようなんてアドバイスは殆どありません。だけど私に云わせるとこの時間がもっとも大事なのです。
一寸キットの箱の中を見てみましょう。何が入っていますか。
大体どこのメーカーのキットであっても最低限こんなものが入っているのではないでしょうか。
○ 図面 ~何度もよく見よう
これが入っていないとどうしようもありません。
昔私たちが帆船模型を作り始めた頃は図面は入っているのですが言葉がイタリア語だったり、ドイツ語だったりで全く歯が立たないものでした。
だけど何とか絵だけ見て作ったものでした。今でも図面は原語のままのものが多いようですが、それでも英語または親切に日本語になっているものもあるようです。少し経験を積んでくると、この図面だけ誰かから借りて船を作ってしまうという人もいます。それほどモデラーにとって図面は多くの情報を含んだ大事なものなのです。例え船が完成し作品がどこかにお嫁入りしたとしても、図面だけは大事に残しておく人が多いのです。
それで図面の見方ですが、技術屋さんならなんの説明もいらないでしょう、だけど船が好きな人が図面の見方を理解している理工系の人とは限りません。図面でやっかいなのは、船やその模型が立体的な形なのに図面は殆どが平面的に描かれているということです。中には最近立体的にかかれた図面も増えてはきましたがやはり平面の図面を見て立体を想像できる力が必要です。普通平面図は三角画法で描かれています。三角画法というのはものをそのまま正面から見た姿を現しています。側面図とか断面図と名前が付いたものもありますが、側面図といっても側面を正面から見た姿なのです。断面図も切った部分を正面から見た姿なのです。それから図面には殆ど寸法が入っています。単位はmmで描かれたものか、インチを単位としたものか、この数値と単位で大きさが分からないといけません。
それから多くの情報が文字で書かれています。本と違って場所があっちこっちに書かれているので最初は戸惑いますが大体必要な部分にその関係した文が書かれています。大事なことを見逃さないようにしましょう。
○ 取扱説明書または製作説明書 ~納得できるまで読む
これも昔は原語でした。今では図面以上に日本語化したものが多いようです。特に他の参考書を読まなくても充分製作できる親切で詳細な説明書もあれば、ぶっきらぼうに勝手に作りなさい程度の説明書もあります。何隻か船を作った人なら例え説明書が無くても何とか作れるようになりますが、初心者にとっては大事な入門ガイドです。概ね製作順序も書かれているので順番を追えば理解できるようになります。
困るのは説明書が付いていないキットです。図面に製作要領のようなものが書かれているのですが製作順序は分からない、部品の詳細加工方法が書いていないなど初心者にとっては大変苦手なキットもあります。最初から説明書をつける意志がメーカーにないのですからいくら探してもこの場合、説明書は出てきません。
こんなときは、近くとか知人で船を造った経験者を捜して教えてもらうか、どこかの模型クラブに入会して入門コースで勉強するかでしょう。大体何処でも親切に教えてくれるはずです。中には有料制の場合もありますが、模型の船を造るのにパソコン教室のような有料で勉強する必要があるでしょうか。
おおらかに作って、人からこれは間違っているよと指摘されるのも楽しみの一つくらいの気構えがよいでしょう。そのうち遊びながらうまくなるものです。
○ フレーム ~左右、ゆがみはないか
殆ど材料はベニヤ板になっていると思います。綺麗にカットしたものもあれば今は少なくなりましたが板に枠の線だけ印刷し糸鋸で切らないといけないものもあります。最近では大きい板にレーザーカットし、一部切り残したのがあります。この場合は切り残し部分を糸鋸で切ります。
レーザーカットした後はラインが美しいのでフレームの切り残しの板をうまく装飾し額縁に入れて美術品のように飾っている人もいます。工夫次第で捨ててしまうような切り残しも、立派な作品に生まれ変わるのです。
糸鋸で手でカットしないといけないようなキットもあります。子供時代の工作を思い出してギーコギーコと念入りに切ります。フレームの線に沿って切りますが絶対に、フレームの中迄切らないように、外にはみ出した場合は後で鑢とかサンドペーパーで簡単に削れますが、切り込みすぎた場合は、補助材を貼り付けてカットし直すという厄介な作業が増えることになるし、できばえも良くありません。
○ キール ~反り、曲がりはないか
殆どフレームとペアで同じような加工がされています。大きい船では2枚に分かれ途中でつなぐものもあります。板が反っていると一寸厄介です。大体ベニヤ板だと思いますがそれでも反っている場合があります。この場合は反対側へ曲げてみるとか、洗濯仕上げ用のアイロンを当て熱しながら反りを修正することもできます。目と直角に板の長さ方向に眺めて反りを調べます。
○ 甲板の基材 ~量は足りるか
薄いベニヤ板をカットしたものが入っています。一旦ベニヤ板を貼った後、表面に甲板を貼ります。
○ 細長い材木 ~折れはないか
● 外板:船体の外板材
● 甲板材:甲板の上貼り板
● マスト・ヤード材:角棒か丸棒
○ 細かい部品 ~不足品はないか
材料は木材・プラスチック・金属など様々ですが、ボートの船体、大砲の固定具、ブロック、デッドアイ、砲門の蓋など、細々した部品が小袋などに入れてあります。
○ 装飾 ~数は、傷は
多いのは低融合金属の成型品です。最近はプラスチックも増えてきました。塗装をするとプラスチックも金属に見えます。彫りがはっきりしたプラスチックの方がよく見えることもあります。金属の場合は固い合金が多く、削ったり切ったりの加工は難しいようです。だから気に入らないからと整形に汗を出そうと思ってもあきらめた方がよいでしょう。キットの装飾がどうしても気に入らない人は、自作というとっておきの方法があるのでこちらを採用して下さい。