外観だけを強調した模型では見ることができないが、本物の船の船底には色んなフック材で船体を補強しています。
勿論それぞれ形は違いますが、船首部分と船尾にかなり大きいフックを取り付け補強剤にしています、スターン側は、長くて柳眉なフックが入っています。
またまた驚いたのですが、船体内側にも所々フレームがあったのです。然もそのフレームはマストのフックも兼ねていてマストはカーリングという板とフックで作られた四角い枠の中に入り込むようになっています。四角い中にマストを入れるというのは全く予想外でした。
これで漸く本当のことが分かりました、今まで船に詳しい人にマストは本物の船ではどのように固定しているんですかと聞いても明快な回答は得られませんでした。又キットだけを作っていたときはマストの丸棒をベニヤ板の切り込みに入れるだけで、どう考えてもこんなことで本物の場合、嵐何かに耐えられるわけがないと、帆船にとっては最も重要な部分を知ってる人が少なかったのです。
帆船模型作りの名人といわれるような人も多くいて工作には名人ですが、実船の知識はそんなに高くはなかったのです。
実船の場合マストを固定するのは、マストよりかなり大きい船底の四角い枠の中にマストを入れテーパーの付いた木片の楔を6枚とか10枚ハンマーで打ち込みながら固定しています。これならどんな大嵐が来ても大丈夫で理屈にかなっています。この辺の様子もこの模型では全て再現しましたので、今までの疑問は作ることでも実感を持って解き明かしたことになります。
さっきの打ち込み用リングフックが付いていてマストを外すときも楔を簡単に外せるような配慮がされています。実に本物は色んな所に操船効率を考えた構造になっていたのです。まあ私たちがのんびり模型を作っている気分と、これから命がけで戦うんだという姿勢は違っていて当然でしょう。
今回の模型作りは苦労の連続だったが、このスターンも我ながら良くできたなと思える部分です。ここも殆どの部品は図面よりも現物合わせ、何回もやり直してやっとフィットする始末でした。
「どこの部分が一番苦労しました?」こんな質問を頂いたときです。どこだったかな、直ぐ答えられないぐらい全部分苦労の固まりでした。
窓の形も微妙に違うがレールの両端に仮付けし、形を確認した。
スターンギャラリーのネットはよく見ると一個一個傾斜の度合いが違う。一個ずつ作って貼るときに斜め位置を決めようと思ったが、そんな簡単にはいかなかった。結局一枚の真鍮板から糸のこで穴の部分を切り抜き、精密鑢で細かく仕上げた。結果は大成功。
レール類は全て柘植の板を重ね合わし、ラインを強調した、サイドの窓も全て形が違うので全て現物から寸法を割り出した。コーナーの飾りは最も不得意な彫刻で表現した。
スターンギャラリー下の飾りも彫刻したが、資料と比べかなりデフォルメしている。資料通りに精密に作るのは、私にとって至難なことだった。
ランタン、真鍮板を削りラミネートした、灯火の部分はアクリライトを整形しランタンの芯にした、あまりにも重くなって、展覧会に出品したら落ちてしまった。