船底からアッパーデッキまで貫通したポンプがメインマストとミズンマストの側に6器あります。船底のビルジと浸水を船外に排出しますが、手押しというか、当時のことですから全く機械力はありません。恐らく沢山の人数で上下運動を繰り返したものと思われます。 

 ポンプは可動可能にしようとして計画しましたが、可動にしても狭くて動かすことができないことが分かったのでソリッドで作りました。ただそれでも可動軸の部分だけは固定していないので本物のポンプの感じで動かすことができます。 

 デッキを貼ってから装着すると工作が大変なのでオーロップを作っている最中に取り付けました。

メインマストの側に設置された4基のポンプ、アッパーデッキには操作部が見える。
メインマストの側に設置された4基のポンプ、アッパーデッキには操作部が見える。
ミズンマストの側に2基設置されたポンプ。
ミズンマストの側に2基設置されたポンプ。
これもクオーターデッキを貼ると見えなくなった。
これもクオーターデッキを貼ると見えなくなった。

 

 ガンデッキ回りの工作が完了したところで、積み込む大砲を作ります。ガンデッキは大砲も含めて全ての装備を完了していないと、上にアッパーデッキを貼るので、ガンデッキの工作ができなくなります。

 大砲の砲身は真鍮の丸棒から旋盤で削ります。言葉では削る・・・でおしまいですが現実はそんな甘いものではありません。大砲が元から先まで同じ直径でできていれば話は簡単ですが、現物にはテーパーという、こわーいものが付いています。それも途中にリングがはまっているのです。後でリングを付けるとなると、余計難しいと感じたので、旋盤加工でリングを表現しました。

 砲身のウエザリングは黒染め液を水で薄く溶いて砲身を浸し、時間を掛けて真っ黒にならないよう中途で処理を止めます。こうすることで真鍮の表面が重みを増し、所々金属光も残っているので、実感のある大砲が出来上がります。話が長くなるので止めますが、この砲身にクロスした砲架に付けるシャフトが貫通しています。これが又厄介で、砲身の中心ではなく少し偏っているのです。だからシャフト穴を開けるときドリルの先が滑って上手く穴が開きません。これは少し大がかりなゲージを作って何とか工作を終了しました。

 

 次ぎに砲架を作りますが、これらは工作の難しさはないのですが、何しろ部品点数が多い、それを一個一個仕上げ最終的には接着剤で固めていきます。

 この大砲をガンデッキに固定するのはブロックと固定環の間にロープを張るのです。大砲は片弦だけに配備したのですが、それでも同じ作業を14回も繰り返します。資料を見るとスターン側の大砲は故障していて船内に引き入れた姿になっています。これも忠実に工作しました。こんな秘密のような工作を見つける人はいないと思いますが、この辺はモデラーの自己満足の好材料になります。

 大砲がとりついた後スターンから覗いてみると、重そうな大砲がずらっと並んでいて壮観です。これで工作中の苦労も一辺に飛んでしまいました。後に残ってのは喜びだけです。この感じは作らないと得られないものです。

何で削ろうか

 部品作りとして障害になったのは大砲の砲身です。木で作ろうか、塗ったり表面加工をしたら材料は何でも良いだろう。然し木にしても、金属にしても削るのをどうしようか、砲身にはテーパーが付いています。丸く削るだけでも大変なのに、テーパーとは、絶望感に襲われました。次ぎにどんな道具を使うかということです。ハンドドリルをぐるぐる回しながら鑢を当てて削ろうか、この方法は昔、鉄道模型を作っていたときに良く使った手法です。一寸実験試作をしてみたが上手くいきません。ここで暗礁に乗り上げ、しばらく模型作りを休憩しました。

 

旋盤を買う

 やはり機械だ、考えたり悩んでいても埒は開かない。丁度会社の研究室に試作部品用として小型旋盤を買うということで、カタログ資料があったのを見つけました。小型旋盤ではテーパー削りが上手くできるような旋盤はあまり見られません。その中で酒井カメラが作っている時計旋盤には別売りだけどテーパー削り用ジグの付いたものがありました。これだ、見ただけで決定、明くる日に銀座まで出かけ伊東屋さんの仲が良かった販売担当者と折衝、バイトとかアクセサリー類を纏めて一括購入しました。74門艦の出費でこれだけが群を抜いたのは当然です。模型の材料費より余程高くつきました。

 

期待のテーパー削り

 旋盤は会社でも使い慣れており、そんなに工作に抵抗感はありません。真鍮の丸棒を買ってきて取りあえずテーパー削りをやってみました。何と快適に削れるではありませんか。買った真鍮棒の材料はJIS規格の快削黄銅棒に該当するものでした。砲身の前と後ろではテーパーの傾斜が違います。又途中にはリング状のバンドがあります。この辺は工作の腕による表現ということに尽きます。砲の先端部分はくびれています。ここの表現はカーブになっているので旋盤を回しながら鑢で削り整形しました。

大砲の先端は素直に円筒状に削る。
大砲の先端は素直に円筒状に削る。
砲身は期待のテーパー削り。
砲身は期待のテーパー削り。
くびれを鑢で整形、いずれも快適に作業は進む、どうやら旋盤工作にはまりそうになる。
くびれを鑢で整形、いずれも快適に作業は進む、どうやら旋盤工作にはまりそうになる。