左舷の外板を張り終わり、キールもほぼ完了したとき、この模型で最大のイベントがやってきました。最初のコンセプト通り船内の構造を知るため、右舷のフレームをカットして内部が見えるようにするということです。
フレームは1個くらいカットしても内部を見ることができないので、かなり大きな開口部となります。どのようにしてカットするか、これこそ失敗すると再現性がないので、今までの作業は全て白紙に戻ります。
まず切る方法ですがドレメルに回転鋸歯を付けてカットするか。糸のこを入れ込んでごしごしこするか。それにカットした後、開口部をフレームのブロックで自由に取り外しをしたいという考えもありました。
本当に悩みました。2,3日悩んで遂に覚悟を決めたのです。その方法はピラニアン鋸(スエーデン鋼でできている歯が極端に薄い鋸です)これを最初カットするフレームの最初の部分に接触させたときは工事の無事を神に祈りました。ゆっくり、ゆっくりウエルの下側の線に沿って切っていきます。何とかライン通りに切れているようです。ウエル側は全て上手くカットできました。
次にも問題は待ち受けています。キール側のカットが残っています。ウエル側と同じようにピラニアンでおそるおそる切り始めました、このとき感じたことですが、こんな大事な仕事は決して急いではいけない、本当にゆっくり作業を進めました。鋸の切り跡が少しでも曲がっていると、それをガイドに鋸歯が進むので直ちに方向転換が必要です。
精神的なプレッシャーも十分に受けて少しずつカットしました。やっと切れた。外れたブロックを開口部に戻してみました。ぴったり合います。成功だ、この日はここで作業を済まし一人で祝杯を挙げたのですが、あくる日 立ち上がれないほど二日酔いになっていました。
カットしたフレームの下側にフレームからはみ出すように丸棒を接着しました。この丸棒が本体のフレームに当たった部分を丸く削り丸棒が上手く収まるようにしました。
これでカットしたフレームを本体に付けたところ、なんとピターとフィットします。フレームのウエル側は真鍮線をストッパーとして入れ込みました。
カットしたフレームを本体に取り付けてみると、余程よく見ないとカット面が見えない、これは大成功です。何が嬉しいかといいますと、展覧会に出したとき何気ない動作でフレームカットを外すときお客さんはびっくりしてくれます。何ともいえない快感です。
モデラーの多くは自分でこういうポイントを多く作って自己満足するか、見せびらかすか、いずれにしても子供らしい喜びによく似ています。
大砲の打ち出し口ですが、四角い穴になっています。この模型では左舷を板貼りして外側は実船並に作りましたが、ブルワークの外板をフレームの角穴に沿ってドリルとカッターナイフで抜きながら整形します。
クオーターデッキとアッパーデッキの大砲にはガンポートに蓋はありませんが。ガンデッキのガンポートには蓋があります。蓋は殆ど正方形に近いのですが微妙に角度が付いています。この辺は現物合わせをしました。これも1枚の板ではなく何枚かを重ね合わせ表は外板と同じ材料で化粧貼りをしています。板材は釘を沢山打って船内側にその頭が出ています。図面をよく見るとくぎの頭は四角だったのですが、そこまではできないので丸線を打ち込んでそれらしく見せました。
釘は1枚のガンポートの蓋に78本、蓋は片弦だけ取り付けたので14枚、これで計算すると1100本釘を打ったことになります。
ガンポートの扉は船体にヒンジで固定されています。このヒンジが又優雅なデザインで、緩やかなカーブになっています。この辺も実船通りに作りたかったので、持ち前の金属工作の仕上げ技法を使って1個ずつ削りだしました。取り付け穴はすでにフライス盤を買っていたので、これで寸法を決めながら穴開けをしました。ヒンジの元は丸く穴が開いています。これは真鍮パイプを銀鑞付けして本物らしい形にしました。
どうしても実船に近ずけたいという意欲がみなぎっています。ガンポートの蓋といえども手抜きはできません。24枚の蓋を作るのに3ヶ月もかかってしまいました。